Datadogコスト効率化プロダクトを作ってみて仮説検証して考えたこと
当初の仮説
AWSのFinOps領域は競合が多く、ツールも成熟している。一方で、Datadogはクラウドプロバイダに次ぐ支出規模(コスト2位)になることが多いにもかかわらず、基本的なコスト削減が十分に行われていないケースが多く、競合も少ないと考えた。
これまでDatadogのコスト削減を実践してきたが、海外を含めても、(手前味噌ながら)下記のレベルに到達している公開情報は見当たらず、差別化の余地があると判断した。
また、コスト削減のようなボトムライン改善型サービスは、ユーザーとサービス提供者の間で利益相反が起きやすいものの、マイクロSaaSとしてニッチ市場で収益を確保する分には問題ないと考えた。*1

仮説が外れた要因
コストへの無関心
そもそも多くのエンジニアやエンジニア組織は、根本的にコストに関心がない。
コスト削減やコストコントロールは「自分の仕事ではない」と捉えられており、興味を持たれにくい。
仮に関心があったとしても、AWSコストの管理だけで手一杯である。
さらに、Datadogのコストまで意識が向く層でも、比較基準が乏しく、しばしばダニング=クルーガー効果が働く可能性がある。
ここまで突破できたとしても、大きめの組織では、実際に担当しているのは現場エンジニア一人だけというケースが多く、購買の意思決定者からは遠く離れている。
そのため、たとえ予算枠内に収まる安価なツールであっても、導入判断まで至るのは難しい。
コスト可視化機能の登場
Datadog自身もDatadogコスト可視化機能を提供し始めており、「少し見えれば十分」と考える大多数の利用者層にはそれで満足されてしまう。
APIキーのハードル
Datadogをプラットフォームとして考えると、実質的にはOIDCが使えず、権限の強いAPIキーしか3rd Partyツールと連携できない。
セキュリティ上の不安が残るのは当然で、これでは試してもらうこと自体が難しい。
結論
総合して考えると、プロダクトを導入してもらうには、現状(=「何もしない」)との間に圧倒的な差、すなわち10倍差が必要だった。
しかし、それを満たすだけの価値、認知・導入・運用コストを含めて既存行動を変えるに足る圧倒的な便益を提供できなかったということになる。
学び
プロダクト開発という点では、ほぼ100% vibe codingでの開発や、Rust言語・ GenAI APIを組み込んだプロダクト開発の勘を習得できた(検証前に開発するのは良くないが、それはそれとして開発したかったので)。*2
また、顧客候補の探し方などマーケティング面での経験を積むことができ、結果的には「得した」と言える。
*1 特に成果報酬型のコスト削減は悪夢
*2 AIは競合的技術である。いくら電卓で計算しても暗算が速くならないのと同じであり、指示されたことをただやるだけの人間が全く学ばないのと等しい。AIからの提案について自分でひと手間かけない限り成長せず、人体実験の被験者や服従者の気持ちになることができる。今回はAIが得意とする「言語の構文周り」に関してはあえてそれで挑戦し、言語周辺の開発インフラについては徹底的に調べて最適化した。アーキテクチャや非機能要件についても本番レベルで対応している